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📚 (4-8) スケールアップでエマルションを評価しよう【粘度の定義】

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アイキャッチ 【スケールアップでエマルションを評価しよう】

粘度の定義

これまでに,”粘度”という言葉が何度か登場しました。

ここでは,粘度における定義について確認したいと思います。

下図は,「撹拌をやさしく捉えてみよう【撹拌をどのように利用するべきか?】」のページでも説明した”せん断力”に係る模式図と似ています。

「液層を動かす力F」が,微細化作用を発揮する「せん断力」に相当します。

このときの内容よりも,少し詳しく考えたいと思います。

粘度のモデル
🚩 粘度のモデル

液体が1枚の板(面積A)であると仮定して,それらが積み重なった”液層”(高さh)があると想像してみてください。

この液層に力Fを与えると,液層は速度Uを生じて変形します。

これが 「せん断力」 の捉え方でした。

このとき,液層が受ける力や速度を考えます。

力持ち
せん断応力τ

液層が力Fを受けるとき,単位面積Aあたりに受ける力の方向によって,次のようにイメージすることができます。

  • 1枚の板に対して垂直方向 👉 圧力P = 力F/単位面積A
  • 1枚の板に対して接線方向 👉 せん断応力τ = 力F/単位面積A
せん断速度ṙ
スピード違反

固体表面上に液層が存在している場合を想定します。

液層の最下部が固体と接しているとき,液層の下部はあまり動くことはできません。

一方,液層の上の方では比較的動きやすいことがわかります。

そこで,この動きやすさ(=せん断速度)は液層の位置によって異なるので,次のように考えることにします。

せん断速度ṙ = 速度U/高さh

📝[memo] 厳密には「ṙ = dU/dh」ですが,ここではこのように理解することとします。

このとき,液層の最上部が一番低く(高さhが一番小さい),最下部が一番高い(高さhが一番大きい)とします。

液層の最上部が一番早く動くので,最下部に近づくにつれて高さhが大きくなり,液層の動きが遅くなっていきます。

📝[memo] 通常の高さの考え方と反対ですが,あまり気にすることはありません。

おもちゃのスライム
粘度η

”せん断応力τ”と”せん断速度ṙ”の考え方から,”粘度η”を次のように定義します。

粘度η = せん断応力τ/せん断速度ṙ

すなわち,粘度ηはせん断応力τとせん断速度ṙの比で表されます。

📝[memo] 「τ = ηṙ」とも表現できるので,粘度は粘性係数とも呼ばれます。

粘度の式
🚩 粘度の式

以上をまとめると,「せん断応力τ=押す力」,「せん断速度ṙ=動く速度」とイメージできそうです。

ある大きさの「せん断応力τ=押す力」を液層に与えたとき,

  • 液層が速く動く(速度ṙは大きい) 👉 粘度ηは低い
  • 液層が遅く動く(速度ṙは小さい) 👉 粘度ηが高い

…と理解することができます。

この結果は,元々のイメージ通りですね。

B型粘度計による粘度測定

粘度測定は,エマルションの長期間での安定性の評価等に汎用的に利用されています。

このとき,B型粘度計がよく使用されています。

B型粘度計(外観)
🚩 B型粘度計(外観)

B型粘度計の特徴

B型粘度計は次のような特徴を有しており,簡易的な測定として非常によく使用されています。

  • 一定の角速度で回転するローターに働く粘性抵抗トルクをスプリングで検出し,粘度に換算する仕組みです。
  • ローターや回転速度を変えることで,非常に広い範囲の粘度を測定することができます。

特にエマルションの測定においては,注意しなければならない点があります。

測定条件の検討
故障した車

測定開始時はサンプルの粘度が不明です。

したがって,計器の故障を防ぐためにもローター番号の大きい方(高粘度用)から小さい方(低粘度用)へ,回転数も低速から高速へと切り換えながら適切な測定条件を決定するのが好ましいです。

測定は複数回行い,平均値を求めるのが一般的です。

📝[memo] 低粘度用ローターで高粘度製品を測定すると,指針が目盛を振り切ってしまうことがあります。

グラスに入ったビール
起泡の混入・ローター空回り

見た目と測定によって得られる粘度の値が一致しない要因です。

サンプル中に起泡が混入していると,粘度が変化することがあります。

また,サンプルの粘度が高すぎてローターが空回りする(サンプルに穴が開く)ような場合は,粘度が低い値となることがあります。

会計帳簿
測定条件の記録

測定条件として使用したローター・回転速度を記録しておくことです。

エマルションの粘度は,測定条件によって得られる粘度の値が変化してしまいます。

スケールアップでエマルションを評価しよう【エマルションの粘度特性①】」のページで,その理由について紹介したいと思います。

🚩 [引用:界面活性剤評価・試験法編集委員会『界面活性剤評価・試験法』技報堂,2002]

粘度の目安(食品の例)

粘度はある数値として示されますが,数値だけ聞いてもピンと来ないかもしれません。

そこで,下図の食品の例を参考にして,粘度の数値と実際の状態を結びつけることをしてみましょう。

🚩 [引用:川崎種一, “流動食品の粘度データ”, New Food Industry, 23, 1981]
ねり飴

図の横軸は粘度を示しています。

粘度の単位は[mPa・s]です。

📝[memo] 昔は[cP](センチポイズ)という単位を使用することがありましたが,今では[mPa・s]が標準となっています。

📝[memo] [cP] = [mPa・s]ですので,単位を入れ替えるだけで数値の換算は必要ありません。

ピーナッツバター

まず,大前提として水の粘度は100 [mPa・s] = 1 [mPa・s]となります。

そして,図の右の方に目を向けていくと粘度が高くなっていき,その粘度に該当する食品が並んでいます。

あくまでも感覚的な問題ですが,粘度が1000 [mPa・s]近くになると,水とは明らかに違う状態だと感じるようになります。

粘度が5000 [mPa・s]を超えるようなときは,「高粘度領域」と言って良いかもしれません。

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