📚 (2-1) 撹拌の立場から乳化をイメージしよう 【乳化とエマルション】
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”乳化”を考えてみよう
”乳化”という現象について、「Introduction【全体イメージ】」のページで少しだけ触れました。
そして、”乳化”に関連して”エマルション”という言葉も良く使われます。

”乳化”や”エマルション”に関連する理論や技術は、界面化学という分野の1つとして位置付けられています。
国内で言えば、日本油化学会や日本化学会(コロイドおよび界面化学部会)等の学術団体で議論されています。
- 日本油化学会 👉 https://jocs.jp/
- 日本化学会(コロイドおよび界面化学部会) 👉 https://colloid.csj.jp/
厳密な定義とは少し異なる点が出てくるかもしれませんが、ここでは”乳化”や”エマルション”が意味するものについて考えてみましょう。
物質の三態
乳化を考える前に、次のようなストーリーを考えてみることにします。


今日は、30 [℃]を超える夏の暑い日です。
そこで、ゼロカマ君はアイスクリームを食べようとみんなを呼びに行ったのですが、冷凍庫(-18 [℃])から出したアイスクリームは溶けてしまいました。
- 凍ったアイスクリーム 👉 固体
- 溶けたアイスクリーム 👉 液体
夏のように暑い日では、アイスクリームは固体(凍ったアイスクリーム)の状態を維持するよりも、液体(溶けたアイスクリーム)の状態に変化してしまいます。
すなわち、冷凍庫(-18 [℃])から夏の日の室温(30 [℃])への温度変化に伴って、物質の状態も変化してしまったと理解することができます。

このように、温度や圧力が決まると物質の状態が決まります。
📝[memo] 厳密には、成分の組成に依存することもあります。
そして、このような状態は通常3種類あり、固体・液体・気体のいずれかになることが知られています。
状態が共存する場合や固体・液体・気体以外の状態もあり得ますが、ここでは考えないことにします。
乳化によって生成した“エマルション”とは?
それでは、”乳化”をするとどのような状態になるのでしょうか?
物質A(連続相)の中に物質B(分散質)を入れて混合することを考えてみたいと思います。
📝[memo] ”連続相”と”分散質”は専門用語ですので、難しいようでしたら軽く流すことにしましょう。
そして、それぞれの物質の三態(固体・液体・気体)の組み合わせとして、次の9パターンが考えられます。
(物質A,物質B)=
①(気体,気体) ②(気体,液体) ③(気体,固体)
④(液体,気体) ⑤(液体,液体) ⑥(液体,固体)
⑦(固体,気体) ⑧(固体,液体) ⑨(固体,固体)
ただし、気体は任意に混合するため、実際には①(気体,気体)の状態は存在しません。
物質Aと物質Bはお互いに混ざり合わない(相溶性を有しない)とき、⑤(液体,液体)の状態を作り出すことを”乳化”といい、その生成物を”エマルション”といいます。

すなわち、”乳化”とは、お互いに混ざり合わない二種類の液体のうち、一方の液体が微粒子となって他方の液体中に分散させることを意味します。
物質Aと物質Bはお互いに混ざり合わない(相溶性を有しない)ので、必ず一方が微粒子のような塊状となって存在しますよね。
エマルションの型
”エマルション”とは、お互いに混ざり合わない二種類の液体のうち、一方の液体が微粒子となって他方の液体中に分散しているものをいいました。
お互いに混ざり合わない二種類といえば、代表例として水と油が考えられます。
…ということは、次の2パターンが想像できます。
- 水(連続相)の中に油滴が分散しているとき、この状態のエマルションはO/W型(Oil in water型)と言います。
- 油(連続相)の中に水滴が分散しているとき、この状態のエマルションはW/O型(water in oil型)と言います。
O/W型やW/O型が複合したW/O/W型(Water in oil in water)やO/W/O型(Oil in water in oil型)というような少し特殊なエマルションも存在します。

O/W型エマルション
O/W型エマルションとは、水(連続相)の中に油滴が分散している状態を言います。


連続相が水であるため、O/W型エマルションは水に馴染みやすいです。
代表的なものとして、マヨネーズや生クリームが挙げられます。
これらの商品は比較的水の性質に近いので、(頑張れば)単独で直接食べることができますよね。
W/O型エマルション
W/O型エマルションとは、油(連続相)の中に水滴が分散している状態を言います。


連続相が油であるため、W/O型エマルションは水に馴染みにくいです。
代表的なものとして、バターやマーガリンが挙げられます。
これらの商品は比較的油の性質に近いので、ほとんど油のように感じるかと思います。
単独で直接食べるのは、(頑張っても)厳しいかもしれませんね。
乳化するということ(O/W型エマルションの例)
それでは、乳化するということはどういった意味を持つのでしょうか?
水と油を使用したO/W型エマルションを例に考えてみましょう。
”乳化”とは、お互いに混ざり合わない二種類の液体のうち、一方の液体が微粒子となって他方の液体中に分散させることを意味します。

…と、先程このようにサラッと説明しましたが少し引っかかった方もいたのではないでしょうか?
そもそも、水と油はお互いに混ざり合うことができません。
それなのに、油が微粒子(=油滴)となって水中に分散することができるのでしょうか?
そこで、次のような考え方を追加する必要になります。
「油の性質を水の性質に変えることができるのであれば、油滴が水に分散したエマルションが生成できるだろう。」
すなわち、油の性質を水の性質に変えるという特別な操作が必要になります。
その結果、油が微粒子(=油滴)となって水中に分散していきそうな気がします。

「撹拌の立場から乳化をイメージしよう【ギブス自由エネルギーと乳化現象②】」のページでも、この操作について改めて説明します。
人間にとって有効な食物や薬、工業的に利用される化学品などは油の性質(水に溶けない)を示す場合が多いです。


もし、これらを薄めることを考えるとアルコールのような有機溶媒を使用しなければなりません。
しかしながら、人間の体は60%近くを水分が占めており水系であると考えることができます。
そのため、これらを水で薄めることができる方が当然好ましいと言えます。
ここで、乳化を利用するとどのような考え方が必要であったか思い出してみましょう。
それは、「油の性質を水の性質に変えることができる」ということでした。
…ということは、乳化することによって水で薄めることができそうですよね。
このように考えると、多くの分野で乳化が利用されている理由の1つとして挙げることができそうです。
また、乳化をすると物質を粒子化することを意味するので、エマルションならではの新たな物性を生み出すこともできます。