🍊 初めての”乳化撹拌装置”(カジュアル版)
- #乳化撹拌装置

「みづほ工業」のホームページへようこそ!

撹拌機について調べていると,こちらの「みづほ工業」のホームページにたどり着きました。
「乳化撹拌装置」という商品を取り扱っているみたいです。
一体,これは何でしょうか?

ようこそ,「みづほ工業」のホームページへ!
「乳化撹拌装置」という言葉は,聞きなじみがないかもしれませんね。
ちなみに,代表的な「乳化撹拌装置」は下図のような特徴を有しています。


複雑な見た目をした機械なんですね。
そして,色々な機能が備わっていそうなこともわかります。

特に,化粧品製造向け真空乳化撹拌装置については,お陰をもちまして,日本国内で圧倒的なトップシェアを維持しています。
①~③の説明は,乳化撹拌装置を説明するテーマごとに分類しました。
このページでは,「乳化撹拌装置」の概要についてカジュアルに説明していきますね。
ページ内リンク
Point ➊ 乳化とは…

水と油が共存した製品

「乳化撹拌装置」という言葉は専門的過ぎるので,一旦置いておくことにしましょう。
最初に,「乳化」という言葉に注目します。
この言葉には,少し馴染みがあるかもしれません。
「乳化」と言えば,どんな製品があるか想像できますか?


身近な食品で考えてみます。
例えば,牛乳・アイスクリーム・マヨネーズ等が思い付きました。
なんとなく,白っぽい色をしていますよね。


ご存知の通り,水と油はお互いに混ざり合うことができない性質を持っています。
しかしながら,油を微粒子化して(油滴にして)水中に分散させることで,水と油はお互いに混ざり合うことができる状態となります。
この技術・現象は“乳化”と呼ばれています。

なるほど!
先ほど紹介した牛乳・アイスクリーム・マヨネーズのような食品は,水と油が共存した製品であると言えますね。

このような“乳化”を利用した製品を製造する設備こそが,みづほ工業がメインで取り扱っている「乳化撹拌装置」の正体となります。
何となくイメージは掴めたでしょうか?
油を微粒子化して油滴を作る

「乳化をするための装置」=「乳化撹拌装置」だったんですね。
それでは,乳化をするためにはどのような機能が求められるのでしょうか?


乳化とはどういった状態だったか思い出してみましょう。
それは,油を微粒子化して(油滴にして)水中に分散させた状態でした。
すると,乳化撹拌装置に必要な機能が想像できるでしょうか?

”油を微粒子化して”とあるので,大きな油の塊を小さくして油滴を作らないといけない!ということですね。
そのために,何らかの方法が必要ですね。

このとき,使用されるのが撹拌機である「ホモミキサー」です。
この「ホモミキサー」は,他の撹拌機メーカーでは見ることができない当社独自のノウハウ・技術が活かされており,お客様に長年愛用されている代表的な高速撹拌機です。


高速撹拌機である「ホモミキサー」は,微細な粒子(液滴)を作り出す能力を持っているんですね。
これが,みづほ工業の大きな特徴と言うことなんですね。

そして,撹拌時には対象となる液体(水と油の混合物)が必要です。
このとき,液体を入れるためのタンク(乳化槽)が必要になるので,乳化撹拌装置では撹拌機とタンクがセットになっています。
🔑”keyword” 乳化時にタンクを使用
このように,乳化をする際には撹拌という機械的な力が活用されているのです。
水と油を結びつける乳化剤(界面活性剤)

ホモミキサーを使うと色々な油を細かくできそうですね。
それでは!色々な油で乳化してみましょう!


ホモミキサーを使用すると油滴を作ることができますが,これだけだと直ぐに大きな油の塊へと戻ってしまいます。
例えば,天ぷらそばの汁の上に浮いている油滴を想像してみましょう。
お箸で油滴同士をくっつけるとどうなりますか?

小さな油滴同士がくっついて,1つの大きな油滴になってしまいます。
ホモミキサーで小さな油滴を作ることができたのに,再び大きな油滴になってしまうということですか?
撹拌に頼るだけではなくて,他に良い手法を考えないといけなくなりました。

そこで,水中で油滴としてできるだけ安定に存在できるように,水と油を結びつける乳化剤(界面活性剤)が必要になります。
このとき,界面活性剤であれば何でも良いというわけではなくて,油との相性があります。
この働きは,処方という化学的な力と言うことにしましょう。
水や油を投入する順番

乳化をするためには,水・油・界面活性剤が必要で,乳化撹拌装置のホモミキサーを使用すると良いことがわかりました。
今度こそ,乳化にチャレンジできそうですね。

もう少しだけ,検討すべきことがあるんです。
ホモミキサーで撹拌をするとき,水・油・界面活性剤の最適な濃度バランスがあります。
言い換えると,水や油を乳化槽へ投入する順番が重要になることがあります。

適切なタイミングで水や油を投入できるように,あらかじめ準備をしておかないといけませんね。
乳化をするためのタンク(乳化槽)以外に,水や油を入れておくタンクが必要になりそうです。
🔑”keyword” 複数のタンクを使用


このようなタンクを溶解槽と呼んでいます。
標準的な乳化撹拌装置では,溶解槽を2台使用します。
油の仲間である油相と,水の仲間である水相の2つに分けられるためです。
パルセータと呼ばれる洗濯機で使用する羽根のような撹拌機で,原料を加熱・溶解していきます。
乳化の最適条件

水・油・界面活性剤の最適な濃度バランスについて考えてきました。
…と言うことは,最適な温度も存在しそうですね。

その通りです!
乳化するときは加熱して,製品を取り出すときは室温近くまで冷却することが求められます。
このとき,熱媒である蒸気,冷媒である冷却水等を使用することになります。
🔑”keyword” 最適条件(真空・加熱・冷却等)を保持
乳化撹拌装置では,加熱・冷却ができないといけませんね。
まとめ(キーワード)

- 乳化時にタンクを使用
- 複数のタンクを使用
- 最適条件(真空・加熱・冷却等)を保持
Point ➋ 撹拌とは…

一般的なクリーム・乳液製造工程

「乳化撹拌装置」の言葉の中に“撹拌”という言葉が入っています。
先ほど,ホモミキサーという撹拌機が登場しましたが,改めて撹拌を考えていくのですね。

その通りです!
乳化撹拌装置は化粧品製造で使用することが多いので,一般的なクリーム・乳液製造工程を例にとって,“撹拌”の使い方について確認してみましょう。
ここでは,下図のような工程を考えることにしましょう。


色々な工程を経て,クリーム・乳液が製造されていくんですね。
撹拌が必要な工程に着目すると,3つあることがわかります。

最初の【① 加熱・溶解工程】では,溶解槽と呼ばれるタンクを使用することをお話ししましたよね。
このとき,撹拌機としてパルセータを使用しました。
実は,ホモミキサーが高速撹拌機であるのに対して,パルセータは低速撹拌機に相当します。

次に,乳化について考えたとき,油滴を作るための撹拌が必要があることがわかりました。
【② 乳化工程】で,高速撹拌機であるホモミキサーを使用することになりますね。

さらに,所定の温度まで冷却する【③ 冷却工程】があります。
ここでも撹拌を使用することになります。

乳化槽ではホモミキサーという撹拌機を使用して乳化しました。
乳化槽内の製品を冷却するということは,ここでもホモミキサーを使用するのですか?

いいえ,そうではないんです!
【① 加熱・溶解工程】と【③ 冷却工程】では,ホモミキサーのような微細な液滴を作り出す能力は期待されていないのです。
むしろ,液を流動(製品を移動)させて均一・混合することが求められます。
このとき使用されるのが,低速撹拌機となります。

…ということは,【② 乳化工程】では高速撹拌機,【③ 冷却工程】では低速撹拌機を使用しなければなりません。
これらの工程で撹拌装置を変更する必要があるということですか?
1つの製品を製造するとき,複数の撹拌装置を使用するのは非常に煩雑です。
乳化撹拌装置の登場

そこで,“高速撹拌機”と“低速撹拌機”の両方を併せ持つ乳化撹拌装置が登場します。
“高速撹拌機”は微細な粒子(液滴)を作り出す能力,“低速撹拌機”は液を流動(製品を移動)させて均一・混合する能力を持っていました。
乳化撹拌装置を使用すると,製品製造に必要な撹拌を1つの装置で行うことができることから,幅広く使用されています。
🔑”keyword” 複数の撹拌羽根が付属


上図の乳化槽の構造を見ると,高速撹拌機であるホモミキサーと低速撹拌機である掻取ミキサーが取り付けられています。
撹拌を必要とする全ての工程で使用できそうですね。
複数の撹拌装置を使用する必要はなくなりました。

そして,乳化槽の外側を覆っている「ジャケット」には,蒸気や冷却水を流すことができるんですよ。
その結果,乳化槽の壁面を経由して熱交換ができるので,加熱や冷却ができるようになっています。
“高速撹拌機”と“低速撹拌機”の組合せ

乳化撹拌装置は,”高速撹拌機”と”低速撹拌機”の両方を併せ持っていることが特徴でした。
すると,高速撹拌機と低速撹拌機の数によって,様々な乳化撹拌装置のパターンを考えることができます。
みづほ工業では,これを型式として下図のように分類しています。


高速撹拌機があると微細化することができるので,乳化・分散に使用できるということですね。
逆に高速撹拌機がなくて低速撹拌機のみの場合,液を流動させる能力が大きくなるので,溶解・混合に使用できるということですね。

はい,その通りです!
それでは,高速撹拌機がある型式の乳化撹拌装置に着目して考えることにしましょう。
さて,どのようなことが考察できるでしょうか?


上表の一番左「上部ダブル(VQ)」は,みづほ工業では標準的な乳化撹拌装置の型式とされているんですね。
次に,1つ右の「上部トリプル(VT)」を見てみると,低速撹拌機が1つ増えています。
すると,この型式では製品を移動させる能力が向上すると考えられます。

はい!その通りです!
1つの解釈として,高粘度製品であっても乳化できる可能性が高まりますよね。
実際には試してみないとわかりませんが,このような期待をすることができます。
これはあくまでも一例にすぎませんが,様々な解釈ができそうですね。

なるほど!
「上部独立3軸(VⅢ)」で使用する低速撹拌機は,掻取ミキサーと比べてシンプルな構造のアンカーミキサーになっています。
製品を移動させる能力が低くなったと解釈すれば,低粘度製品であればこの型式で十分と評価できますね。

「上下トリプル(VTU)」では高速撹拌機が乳化槽底に取り付けられているので,少量の製品であっても撹拌できそうですね。
このような感じで,それぞれの型式でできることや特徴を自由に発想していくと良いですよ。
まとめ(キーワード)

- 複数の撹拌羽根が付属
Point ➌ 装置とは…

乳化槽・溶解槽の位置

「乳化撹拌装置」について段々とわかってきました。
実際に工場へ設置して,使っていくことを考えていきたいですね。
このとき,どういった点に気を付けなければいけませんか?

まずは,乳化槽の働きについて考えてみましょう。
乳化槽で製品が製造された後,乳化槽の大きさに相当する容器へと移されます。
そのため,乳化槽の下に製品の取り出す作業をするためのスペースを確保しなければならないことがわかります。

乳化撹拌装置を設置するときは,このようなスペースが必要なんですね。
他にもありますか?


さらに,製品を容器へ移すことができるように,乳化槽は製造フロアの床から高い位置に設置する必要があります。
大きな容器になると背が高くなるので,こうしないと乳化槽内の製品を取り出せなくなりますよね。

乳化槽が高い位置にあるということは,作業性が悪くなってしまいます。
溶解槽で調製した油相や水相は,最終的に乳化槽へ移送しなければなりません。
すると,溶解槽が乳化槽よりも低い位置にある場合,高い位置にある乳化槽へ油相や水相を移送するのが困難です。

その通りです!
そのため,溶解槽は乳化槽と同じ高さ,もしくはそれ以上が好ましいと言えます。
…ということは,溶解槽も高い位置に設置する必要があるということですね。


油相や水相を移送する工程はこれで良いかも知れません。
一方で,油相・水相の調製時において原料投入の作業性を考えると,溶解槽の位置は低い方が好ましいです。
なんだか矛盾が生じてきました。

ここでは,溶解槽を高い位置に設置する方を採用したいと思います。
そして,作業性を改善するためには,特に大型の乳化撹拌装置(生産機)では作業台を使用することになります。

以上をまとめると,大型の乳化撹拌装置(生産機)における乳化槽・溶解槽・作業台の位置関係は下図のようになりますね。
このような配置を基本的な考え方として,実際の工場に乳化撹拌装置が据え付けられているんですね。
🔑”keyword” 作業ステージが必要

乳化槽の開閉

一般的な乳化撹拌装置では,蓋を開けて乳化槽内へ原料を投入することがあります。
製品を取り出すときも,蓋を開ける場合がありますね。
このとき,蓋を上昇させる場合と乳化槽を下降させる場合が考えられます。

大型の乳化撹拌装置においては,乳化槽の開閉は蓋の昇降によるものが圧倒的に多いです。
ところで,乳化槽は製造フロアの床から高い位置に設置されていました。
すると,蓋はさらに高いところまで上がっていきます。

なるほど!
そうすると,乳化撹拌装置を設置する工場の天井を高くして,蓋昇降用のスペースを確保する必要があるんですね。
🔑”keyword” 蓋昇降用のスペース確保

乳化撹拌装置の設置

このように乳化撹拌装置の構成を考えると,何となく特徴が見えてきました。
すると,乳化撹拌装置を工場に設置する際はおおよそのパターンが決まってきます。
最初に紹介するのは,1フロア構成例です。


原料倉庫から取り出した原料を秤量しています。
その後,調合室の昇降リフトで原料を作業台まで持っていきます。
高い位置にある溶解槽で原料を加熱・溶解しなければならないからですね。


その通りです!
その後,溶解槽で調製した油相や水相は,乳化槽へと移送しなければなりません。
今回の事例では,乳化槽と溶解槽が同じ高さに設置されているケースです。

乳化槽と溶解槽が同じ高さに設置されていると,油相や水相の移送は難しそうですね。
どうやってするのでしょうか?

乳化槽中を減圧すると圧力差が生じるので,油相や水相の移送ができるようになります。
例えるなら,掃除機で油相や水相を吸引するようなイメージですね。
…今度は,2フロア構成例を見ていきましょう。


原料倉庫から取り出した原料を秤量するのは,1フロア構成例と同じ流れです。
しかし,途中から2階で作業することになりました。
これが,2フロア構成という意味ですか?


はい!
すると,2階には溶解槽だけが設置されていて,1階には乳化槽のみが設置されているパターンができます。
工程や作業内容で区分するような場合は,このようなレイアウトが良いかもしれませんね。

このような配置であれば,油相や水相の移送が自然にできるようになりそうです。
乳化槽へ落下させれば良いですもんね。
まとめ(キーワード)

- 作業ステージが必要
- 蓋昇降用のスペース確保
さいごに…

簡単ではありますが,“乳化撹拌装置”を使用するという視点から,3つの特徴を中心に紹介してきました!
途中では,難しい話もあったかもしれませんね。

エマルション製品の調合や開発にあたっては,“処方的な力”と“機械的な力”のバランスを考えた製造技術が重要になることがわかりました。
乳化撹拌装置は,特に“機械的な力”を発揮する設備として,エマルション製品の製造に大きな役割を果たしていますね。


みづほ工業にとってのお客様(メーカー)は,このような技術を活用しながら製品を製造されています。
このページでは,みづほ工業の「乳化・撹拌装置事業」に関する紹介がメインでした。
その他事業においても「真心こめた ものづくり」で社会に貢献するために,装置の洗浄や生じた排水の処理工程でお役に立てるよう取り組んでいます。
関連する技術の詳細は「カクハンラボ」の各種ページでご確認いただければと思います。


尚,カタログに準拠した撹拌乳化装置の紹介はこちらのページでご覧いただくことができますが,記事をご覧になる前にパスワードの入力をお願いいたします。
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乳化撹拌装置に関する詳細は,まずはみづほ工業までお問い合わせください。