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📚 (4-2) スケールアップでエマルションを評価しよう【エマルションの安定性(クリーミング)】

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アイキャッチ 【スケールアップでエマルションを評価しよう】

エマルションの安定性

「スケールアップでエマルションを評価しよう【スケールアップの考え方】」のページで、エマルションの品質(「安定性」と「使用性」)について紹介しました。

ここでは、「安定性」について考えてみましょう。

これまでに、界面活性剤を添加しても界面張力を0にすることはできないため、エマルションが何らかの仕事をして、自発的に油水分離の状態になっていくことを確認しました。

以下は参考のページです。

例えば、エマルション中の乳化粒子(油滴)が浮上することにより生じる”クリーミング”、乳化粒子同士が集まることにより生じる”凝集”、複数の乳化粒子が別の1つの粒子になる”合一”等の現象が引き起こされます。

エマルションの安定性(クリーミング)
🚩 エマルションの安定性(クリーミング)

このように、様々なプロセスを経てエマルションは最終的に油水分離します。

📝[memo] 赤い四角で囲った”クリーミング(乳化粒子の浮上)”については、この後に触れていきます。

ここで、様々な専門用語が登場してきたので、それぞれの意味についてスケールアップの視点からイメージできるように考えていきましょう。

クリーミング

ここでは、”クリーミング”について掘り下げていくことにしましょう。

水と油

”クリーミング”とは、乳化粒子が浮上(沈降)することでエマルションが部分的に濃縮されることを言います。

その結果、水と油が分離する方向へと進んでいくと考えます。

”クリーミング”はエマルション中の乳化粒子が浮上することによって生じるので、乳化粒子が浮上しやすいか否かが重要になります。

すなわち、クリーミングの起こりやすさは乳化粒子の浮上速度に依存すると考えることができます。

スケールアップ時においては、使用する撹拌装置が変わったとしても“機械的な力”を等しく与えることが重要でした。

“機械的な力”の大きさによって乳化粒子の浮上速度が変化するのであれば、”クリーミング”はスケールアップの失敗時に見られる品質NGとなる事例です。

果たして、“クリーミング”は“機械的な力”が変化することで引き起こされるのでしょうか?

クリーミング
🚩 クリーミング

クリーミングを評価するための計算式として、Stokesの式が知られています。

📝[memo] 粒子に働く抵抗力(Stokesの抵抗則)と粒子に働く浮力と重力の関係からこの式が導かれますが、その詳細については省略します。

Stokesの式
🚩 Stokesの式

このStokesの式から、数学的に分かることを考えてみたいと思います。

浮上速度を変化させる因子:粒子径

Stokesの式(粒子径)
🚩 Stokesの式(粒子径)
浮上速度を変化させる因子:粒子径
🚩 浮上速度を変化させる因子:粒子径

ここでは、浮上速度を変化させる因子として「粒子径d」に注目したいと思います。

Stokesの式から、数学的に次のことが分かります。

  • 粒子径d 大 👉 浮上(沈降)速度v 大
  • 粒子径d 小 👉 浮上(沈降)速度v 小

例えば、乳化粒子の粒子径dが大きくなると浮上(沈降)速度vが大きくなるので、“クリーミング”が引き起こされやすくなります。

次に、この解釈が実際の現象としてどのようなことを表しているかを考えてみましょう。

粒子径dが小さくなると、乳化粒子によるブラウン運動(熱による動き)が支配的となります。

その結果、見かけ上、エマルションが撹拌されている状態と同じことを意味するため、乳化粒子は必ずしも浮上する方向へ動く必要はありません。

したがって、乳化粒子の浮上を抑制できると考えられます。

📝[memo] 顕微鏡で乳化粒子を観察してみると、小さな粒子ほど速く動いていることが分かります。

浮上速度を変化させる因子:粘度

Stokesの式(粘度)
🚩 Stokesの式(粘度)
浮上速度を変化させる因子:粘度
🚩 浮上速度を変化させる因子:粘度

次に、浮上速度を変化させる因子として「粘度η」に注目したいと思います。

Stokesの式から、数学的に次のことが分かります。

粘度η 大 👉 浮上(沈降)速度v 小
粘度η 小 👉 浮上(沈降)速度v 大

例えば、粘度ηが小さくなると浮上(沈降)速度vが大きくなるので、“クリーミング”が引き起こされやすくなります。

次に、この解釈が実際の現象としてどのようなことを表しているかを考えてみましょう。

連続相の粘度ηが高いと、抵抗を受けて乳化粒子が浮上しにくくなります。

増粘剤が含まれるとき、増粘剤による組織体が乳化粒子の浮上を妨げる可能性があります。

浮上速度を変化させる因子:密度差

Stokesの式(密度差)
🚩 Stokesの式(密度差)
浮上速度を変化させる因子:密度差
🚩 浮上速度を変化させる因子:密度差

最後に、浮上速度を変化させる因子として「密度差(ρ – ρ0)」に注目したいと思います。

Stokesの式から、数学的に次のことが分かります。

密度差(ρ – ρ0) 大 👉 浮上(沈降)速度v 大
密度差(ρ – ρ0) 小 👉 浮上(沈降)速度v 小

例えば、密度差(ρ – ρ0)が大きくなると浮上(沈降)速度vが大きくなるので、“クリーミング”が引き起こされやすくなります。

次に、この解釈が実際の現象としてどのようなことを表しているかを考えてみましょう。

密度差(ρ – ρ0)が小さくなると生じる浮力Fが小さくなるため、乳化粒子が浮上しにくくなります。

📝[memo] 浮力の式「F = (ρ – ρ0)Vg」から、密度差(ρ – ρ0)が小さくなると生じる浮力Fが小さくなることが分かります。

浮上速度を変化させる因子と“機械的な力”

以上をまとめると、次のようなことが分かりました。

粒子径・粘度

浮上速度を変化させる力=機械的な力 👉 ”機械的な力”による影響を受ける。

密度差

浮上速度を変化させる力=処方的な力 👉 ”機械的な力”による影響を受けない。

その結果、浮上速度を変化させる因子の中に”機械的な力”による影響を受けるもの(=粒子径・粘度)が含まれていることが分かりました。

したがって、”クリーミング”はスケールアップの失敗時に見られる品質NGとなる事例であると解釈できます。

📝[memo] スケールアップ前後で乳化粒子の粒子径dや粘度ηが変化すると、”クリーミング”の起こりやすさが変化します。

浮上速度を変化させる因子と“機械的な力”
🚩 浮上速度を変化させる因子と“機械的な力”
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