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📚 (5-21) スケールアップ理論を考えてみよう ー 乳化編【掻取・パドルミキサーのスケールアップ検討例】

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アイキャッチ【スケールアップ理論を考えてみようー乳化編】

乳化撹拌装置で使用する掻取・パドルミキサーのスケールアップ

「スケールアップ理論を考えてみよう ー 乳化編【一般的なパドル(プロペラ)ミキサーのスケールアップ検討例】」のページの続きとなります。

事故調査官

乳化撹拌装置を使用する場合は,掻取ミキサーや掻取ミキサーを使用することが考えられます。

ここでは,スケールアップをするにあたって,下図における3 L試験機の条件が最適であったと仮定します。

そして,この条件を基に25 L中間機へスケールアップすることを考えます。

そこで,掻取ミキサーによるスケールアップ計算で必要となる因子について確認しておきましょう。

📝[memo] ここでは掻取ミキサーのスケールアップ事例を紹介します。(パドルミキサーでも考え方は同じです。)

掻取ミキサーのスケールアップ条件
🚩 æŽ»å–ミキサーのスケールアップ条件
3 L試験機
  • 羽根径 [m] 👉 3 L試験機で使用する掻取ミキサーは決まっているので,自然に確定する値となります。
  • 回転数 [r/min] 👉 3 L試験機にて決定した最適条件によって決まるので,実験によって確定する値となります。
  • 吐出係数 [-]・動力数 [-] 👉 3 L試験機で明らかになっておらず,確定しない値となります。
  • 製品仕込量 [L] 👉 製品仕込量は任意なので,自分で確定する値となります。
  • 撹拌槽径 [m] 👉 3 L試験機で使用する撹拌槽は決まっているので,自然に確定する値となります。
  • 液の粘度 [Pa・s] 👉 3 L試験機で製造する製品は決まっているので,自然に確定する値となります。
  • 密度 [kg/m3] 👉 3 L試験機で製造する製品は決まっているので,自然に確定する値となります。
  • 混合時間 [min] 👉 3 L試験機にて決定した最適条件によって決まるので,実験によって確定する値となります。
25 L中間機
  • 羽根径 [m] 👉 25 L中間機で使用する掻取ミキサーは決まっているので,自然に確定する値となります。(幾何学的相似は満たしません)
  • 回転数 [r/min] 👉 掻取ミキサーによるスケールアップ計算で算出する値となります。(未知数)
  • 吐出係数 [-]・動力数 [-] 👉 25 L中間機で明らかになっておらず,確定しない値となります。
  • 製品仕込量 [L] 👉 製品仕込量は任意なので,自分で確定する値となります。
  • 撹拌槽径 [m] 👉 25 L中間機で使用する撹拌槽は決まっているので,自然に確定する値となります。
  • 液の粘度 [Pa・s] 👉 25 L中間機で製造する製品は決まっているので,自然に確定する値となります。
  • 密度 [kg/m3] 👉 25 L中間機で製造する製品は決まっているので,自然に確定する値となります。
  • 混合時間 [min] 👉 掻取ミキサーによるスケールアップ計算で算出する値となります。(未知数)

25 L中間機における回転数・混合時間は,算出する値(未知数)です。

そこで,これら回転数・乳化時間を算出することにします。

一方,吐出係数・動力数は,確定しない値です。

この点が,「スケールアップ理論を考えてみよう ー 乳化編【一般的なパドル(プロペラ)ミキサーのスケールアップ検討例】」のページで紹介したパドルミキサーの事例とは異なります。

掻取ミキサーの計算例⑴(1.5 L → 15 L仕込み・単位体積あたりの動力~回転数)

平等院鳳凰堂

乳化撹拌装置で使用する撹拌羽根は,基本的に幾何学的相似を満たしません。

そこで,掻取ミキサーの羽根径は決められているとして,いきなり単位体積あたりの動力の検討を始めます。

最適な回転数N3,羽根径D3,製品の密度ρ,製品仕込量V3が既知であるので,これらを単位体積あたりの動力の式に代入して単位体積あたりの動力PV3をを求めます。

動力数Npは明らかになっていない値であるため,そのままの形で残しておきます。

PV3 = Npρ(N3/60)3D35/V3 = Np×1000×(70/60)3×0.1405/0.0015 = 56.94Np [W/m3]

掻取ミキサーの計算例⑴(1.5 L → 15 L仕込み・単位体積あたりの動力~回転数)1
🚩 æŽ»å–ミキサーの計算例⑴(1.5 L → 15 L仕込み・単位体積あたりの動力~回転数)1
プレゼント箱を持つ人

一方,「”(条件①)平均液滴径が等しくなるようにする”という考え方」=「”(条件②)物質移動速度が等しくなるようにする”という考え方」=「”単位体積あたりの動力を等しくする”という考え方」であるので,25 L中間機における単位体積あたりの動力PV25も56.94Np [W/m3]となります。

さらに,既知である最適な回転数N25,羽根径D25,製品の密度ρ,製品仕込量V25を単位体積あたりの動力の式に代入して,単位体積あたりの動力PV25を求めます。

動力数Npは明らかになっていない値であるため,3 L試験機と等しいとしてそのままの形で残しておきます。

PV25 = Npρ(N25/60)3D255/V25 = 56.94Np = Np×1000×(N25/60)3×0.3005/0.015

N25 = 42.3 [r/min(min–1)]

以上より,25 L中間機における掻取ミキサーの回転数N25を算出することができました。

掻取ミキサーの計算例⑴(1.5 L → 15 L仕込み・単位体積あたりの動力~回転数)2
🚩 æŽ»å–ミキサーの計算例⑴(1.5 L → 15 L仕込み・単位体積あたりの動力~回転数)2

掻取ミキサーの計算例⑵(1.5 L → 15 L仕込み・吐出量)

交通管理隊

続いて,最適な回転数N3,羽根径D3を吐出量の式に代入して,吐出量Q3を求めます。

一方で,掻取ミキサーにおけるNq3やNq25の値がわかりません。

そこで,Nq3 = Nq25 = Nqとして仮定し,吐出量もNqを用いたままで表すことにします。

Q3 = Nq3N3D33・103 = Nq×70×0.1403×1000 = 192.1Nq [L/min]

同様にして,既知である吐出係数Nq25,羽根径D25,そして算出した回転数N25を吐出量の式に代入して,吐出量Q25を求めます。

Q25 = Nq25N25D253・103 = Nq×42.3×0.3003×1000 = 1142.1Nq [L/min]

以上より,3 L試験機および25 L中間機における掻取ミキサーの吐出量Q3とQ25を算出することができました。

📝[memo] 「スケールアップ理論を考えてみよう ー 乳化編【ホモミキサーのスケールアップ検討例②】」のページで紹介した内容と同じことをしています。

掻取ミキサーの計算例⑵(1.5 L → 15 L仕込み・吐出量)
🚩 æŽ»å–ミキサーの計算例⑵(1.5 L → 15 L仕込み・吐出量)

掻取ミキサーの計算例⑶(1.5 L → 15 L仕込み・循環回数~混合時間)

最後に,既知である最適な混合時間t3,製品仕込量V3,そして算出した吐出量Q3を循環回数(パス回数)の式に代入して,循環回数n3を求めます。

n3 = t3Q3/V3 = 2.0×192.1Np/1.5 = 256.1Np

滝

次に,25 L中間機と3 L試験機の循環回数nが等しいとするので,n25 = n3となる関係式が得られます。

さらに,既知である最適な混合時間t25,製品仕込量V25,そして算出した吐出量Q25を循環回数の式に代入して,混合時間t25をを求めます。

n25 = t25Q25/V25 = 256.1Np = t25×1142.1Np/15

t25 = 3.4 [min]

以上より,25 L中間機における掻取ミキサーの混合時間t25を算出することができました。

掻取ミキサーの計算例⑶(1.5 L → 15 L仕込み・循環回数~混合時間)
🚩 æŽ»å–ミキサーの計算例⑶(1.5 L → 15 L仕込み・循環回数~混合時間)

掻取ミキサーの計算例⑷(1.5 L → 15 L仕込み・撹拌レイノルズ数)

ここでも,無次元混合時間について考えます。

無次元混合時間が適用できるためには,乱流域であることが求められます。

そこで,無次元混合時間を考える前に,3 L試験機と25 L中間機の撹拌レイノルズ数を計算しておきたいと思います。

目が回る女性

最適な回転数N3,羽根径D3,製品の密度ρ,製品の密度ηが既知であるので,これらを撹拌レイノルズ数の式に代入して撹拌レイノルズ数Re3をを求めます。

Re3 = N3D32ρ/60η = 70×0.1402×1000/(60×0.001) = 2.29×104 > 1000 👉 乱流

その結果,乱流域であることが確認できました。

目が回る男性

同様にして,最適な回転数N25,羽根径D25,製品の密度ρ,製品の密度ηが既知であるので,これらを撹拌レイノルズ数の式に代入して撹拌レイノルズ数Re25を求めます。

Re25 = N25D252ρ/60η = 42.3×0.3002×1000/(60×0.001) = 6.35×104 > 1000 👉 乱流

その結果,乱流域であることが確認できました。

掻取ミキサーの計算例⑷(1.5 L → 15 L仕込み・撹拌レイノルズ数)
🚩 æŽ»å–ミキサーの計算例⑷(1.5 L → 15 L仕込み・撹拌レイノルズ数)

スケールアップ前後で乱流域であることが確認できたので,続いて無次元混合時間を考えることにします。

掻取ミキサーの計算例⑸(1.5 L → 15 L仕込み・無次元混合時間~混合時間)

最適な回転数N3,混合時間tM3が既知であるので,無次元混合時間tM3N3を求めます。

📝[memo] 表記が異なるだけで,「混合時間t=混合時間tM」を意味しています。

tM3N3 = 2.0×70 = 140

一方,”無次元混合時間が等しくなるようにする”という考え方から,25 L中間機における無次元混合時間tM25N25も140となります。

さらに,最適な回転数N25が既知であるので,無次元混合時間の式に代入して混合時間tM25を求めます。

tM25N25 = 140 = tM25×42.3

tM12 = 3.3 [min]

以上より,25 L中間機における掻取ミキサーの混合時間tM25を算出することができました。

掻取ミキサーの計算例⑸(1.5 L → 15 L仕込み・無次元混合時間~混合時間)
🚩 æŽ»å–ミキサーの計算例⑸(1.5 L → 15 L仕込み・無次元混合時間~混合時間)

掻取ミキサーのスケールアップ計算の結果

25L中間機における掻取ミキサーの回転数・混合時間を算出することができました。

まとめると下図のようになります。

掻取ミキサーのスケールアップ結果
🚩 æŽ»å–ミキサーのスケールアップ結果

周先端速度一定と単位体積あたりの動力一定

卒啄同時

「スケールアップ理論を考えてみよう ー 乳化編【ホモミキサーのスケールアップ検討例②】」のページで紹介したように,周先端速度一定の条件では,25L中間機における掻取ミキサーの回転数は33 [r/min]となりました。

当然かもしれませんが,単位体積あたりの動力一定の条件で求めた回転数とは43 [r/min]異なります。

これは,スケールアップ理論の違いから生じるものと理解することができます。

掻取ミキサーの役割を考えると,単位体積あたりの動力一定の考え方が適していると言えます。

ホモミキサーと併用する場合

女性サポーター

例えば,乳化工程が挙げられます。

このとき,掻取ミキサーによるスケールアップ計算で最適な混合時間が得られますが,ホモミキサーによる乳化時間を優先します。

掻取ミキサーは,どちらかというとサポート役になります。

📝[memo] 微細化作用を必要とする乳化を最優先にしないといけません。

電動自転車で3人乗りするお母さん

また,実際に掻取ミキサーの最適回転数を算出することを考えたとき,周先端速度一定の条件で計算する方が比較的容易です。

単位体積あたりの動力一定の条件では,若干計算がややこしいです。

上述したように,掻取ミキサーはどちらかというとサポート役になるので,回転数としての厳密な答えが必要ないかもしれません。

あくまでも目安となる回転数が欲しい!ということであれば,周先端速度一定の条件で計算する方が良いかもしれません。

📝[memo] 得られた回転数を参考に,この条件で試作可能か否かの確認は必要となります。

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