乳化撹拌装置同士で比較する

これまではビーカーワーク⇔試験機のスケールアップを考えてきましたが，次に試験機⇔中間機のスケールアップをすることを想定します。

すなわち，乳化撹拌装置同士で比較するということです。

📝[memo]　今回の事例では，乳化撹拌装置（試験機）を使用できたと仮定します。

このとき，試験機と中間機は同じ乳化撹拌装置ですが，仕様が異なっているところが何点かあります。

少し比較をしてみましょう。

大きさに関すること

試験機と中間機では単純に大きさが異なるので，ホモミキサーや乳化槽の仕様が異なります。

📝[memo]　ホモミキサーの羽根径・回転数，乳化槽の標準仕込量・乳化槽径が異なっています。

これらは，当然の相違点と言えます。

乳化槽に関すること

材質・形状が異なります。

また，中間機では使用する熱媒として蒸気を使用することができます。

溶解槽に関すること

中間機で初めて溶解槽を使用することになります。

中間機による検討の意義

それでは，中間機による試作をすることの意味について考えます。

最終目標は，ホモミキサーを備えた乳化撹拌装置（生産機）を使用して製品を製造することです。

これは，試験機による試作のときに述べた通りでした。

このとき，当然ながら生産機における製品の製造条件を決定する必要があります。

生産機の仕様に近い中間機による試作結果を参考にして，生産機における製品の製造条件を決定したいところです。

そこで，中間機を用いた試作によってこれを確認するというのが意義になります。

クリーム状エマルションの試作工程（25 L）

次のような工程で，クリーム状エマルションの試作をすることを考えます。

「乳化撹拌装置でスケールアップをしてみよう【中間機による試作の流れ】」のページで一連の流れを写真にして紹介しますが，ここでは概要を掴んでいただければと思います。

① 油相の均一混合

② 水相の均一混合

③ 油相の投入

④ 乳化準備

⑤ 水相の投入

⑥ エマルションの調製

⑦ エマルションの冷却

⑥ エマルションの調製時におけるホモミキサーの条件

少し，補足をしておきます。

「スケールアップ理論を考えてみようー乳化編【ホモミキサーのスケールアップ検討例①】」のページで紹介したように，ホモミキサーの回転数・乳化時間に関する内容をそのまま採用しています。

そして，これまでに述べてきたスケールアップ理論に基づくと下記の結果が得られます。

試験機

• 回転数：7000 [r/min]
• 乳化時間：1.0 [min]

中間機

• 回転数：4600 [r/min]
• 乳化時間：4.3 [min]

④ 乳化準備，⑤ 水相の投入時におけるホモミキサーの条件と投入時間

順番が前後しましたが，本工程についても考えます。

ホモミキサーの回転数に関しては，⑥ エマルションの調製時と同じ結果が得られます。

続いて投入時間に関して最適な条件がわからないため，ある仮定をすることにしました。

それは，ホモミキサーで撹拌しながら投入しているため，”投入時間＝撹拌時間”とみなすというものです。

📝[memo]　厳密には，仕込量が変化しているため正確ではありません。

すると，下記の結果が得られます。

試験機

• 回転数：7000 [r/min]
• 投入時間：1.0 [min]

中間機

• 回転数：4600 [r/min]
• 投入時間：4.3 [min]

もし，試験機の段階で投入時間について詳細な検討が済んでいれば，このような仮定を設ける必要はなくなります。

そもそも，投入時間がスケールアップの成否に依存しない可能性もあります。

今回の事例では何ら知見がないとして，このような仮の設定をしました。

上述したように，試験機と中間機は同じ乳化撹拌装置ですが，仕様が異なっているところが何点かあります。

そこで，スケールアップ計算や仮定をしながら，中間機における試作工程をこのように決めました。

次の「乳化撹拌装置でスケールアップをしてみよう【中間機による試作の流れ】」ページでは，実際に（作業としての）スケールアップをしていきますね。